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福岡高等裁判所 昭和31年(ネ)648号 判決

大川市向島二〇九七番地の二

控訴人

有限会社古賀木工場

右代表者代表取締役

古賀徳次郎

右訴訟代理人弁護士

由布喜久雄

市榎津三一五番地の一

被控訴人

大川税務署長

浅野多一郎

右指定代理人

今井文雄

新盛東太郎

宮崎民生

右当事者間の昭和三十一年(ネ)第六四八号物品税賦課処分無効確認請求控訴事件について、当裁判所は、次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は「原判決を取消す。被控訴人が昭和二八年九月一四日控訴人に対してなした物品税金四二、九〇〇円の賦課処分が無効であることを確認する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴指定代理人は、主文と同旨の判決を求めた。

当事者双方の事実上の陳述、証拠の提出援用認否は、控訴代理人において「昭和二五年頃における大川市の家具製造業者間では、普通の片袖高机(長さ二尺五寸、巾三尺五寸、高さ二尺五寸)は一個金一、九〇〇円ないし金二、〇〇〇円程度で製造販売していたので、本件物品税の課税対象とせられた事務机の課税標準価格は現実の取引価格によるべきものではなく右市場価格によるべきものであり被控訴人においてはこれ等の事実を知悉しながら九州電力株式会社港第二発電所の物品註文書及び控訴人の納品書に片袖高机の単価として立替金を含めた金額が記載せられたという一事をもつて被控訴人か直ちにこれにつき課税対象ありと誤認したのは重大な過誤があつたものというべく、右過誤は本件賦課処分を無効とする程度に明白かつ重大なものであること明らかである。」と述べ証拠として、被控訴指定代理人は当審において新に乙第三号証の一ないし四を提出し、控訴代理人は右乙号証の認否をしない外は、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。

理由

当裁判所も原判決がその理由において説示するところと同様の理由により、被控訴人が控訴人の訴外九州電力株式会社(当時日本発送電株式会社)港第二発電所に対する本件事務机の移出販売に対し控訴人主張の如き物品税を賦課したことは、課税対象について誤認をなしたもので違法の処分であると認定するから、右理由の記載(原判決書四枚目裏八行から六枚目裏四行まで)をここに引用する。

控訴人は、被控訴人の右誤認による賦課処分の違法は、これを無効とする程度に明白かつ重大なものであると主張するが、本件のように課税物件中ある一定の価格に満たないものを課税対象より除外しているような場合に、その価格の認定を誤り、右誤認によつて課税対象とならないものについてなした賦課処分の違法は取消の原因となることはあつても、これをもつて直ちに無効とすべき程度の明白にしてかつ重大なものということはできない。仮に控訴人主張の如く被控訴人において普通の片袖高机の一般市場価格を知つていたとしても、本件事務机は普通のものよりその長さにおいて二寸長く従つてその一個の移出価格が金二、四〇〇円であつたことは、原審での控訴会社代表者の供述に徴し明らかなところであるのみならず右取引価格を基準として本件事務机が物品税の課税対象となるかどうかを決定すべきもので、一般市場価格をもつて決定すべきものでないこと論なきところであり、しかも前記発電所の物品註文書及び控訴会社の納品書に本件事務机の単価として立替金を含めて金二、九〇〇円ないし、金二、七〇〇円と記載せられていたという事実もある以上、被控訴人のなした課税対象についての前記誤認は本件賦課処分を無効とする程度に明白かつ重大なものとなすを得ない。

よつて控訴人の本訴請求を棄却した原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないから、民事訴訟法第三八四条第八九条第九五条により主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 竹下利之右衛門 裁判官 小西信三 裁判官 岩永金次郎)

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